弔慰の品で小ハマリ
先日、知人が飼っていた犬が亡くなった。
知人は、ずいぶんかわいがっていて、フリスビードックの訓練などもして、一緒に楽しんでいたそうだ。
犬が亡くなった事は電話で聞いたのだけれど、その電話の向こうでも涙を流していた。
亡くなったのが人間でなくても、家族と同じ様に過ごしてきた者が亡くなるのは辛いと思う。
けっこう付き合いの長い知人でもあるので、弔慰の品を贈ろうと考えたのだが…はて、この場合、どうしたらいいのだろう?
人のお葬式であれば、お通夜またはお葬式に伺い、受付でお香典を渡すというような形になるが、飼っていた犬が亡くなった話ではあるので、特段のお葬式を行うわけではなく、お香典を渡すタイミングがない。
火葬などに伏した後に仏前に伺って、ご霊前かご仏前を渡すと言っても、犬の仏壇を作るということまではないだろうから、単に伺って渡すだけというのも、ちょっと引ける。
なにより、飼っていた犬が亡くなったという事に対して、現金はちょっとリアルすぎる感があって抵抗を感じるし、受付に渡すわけでもなく、仏前に出すわけでもなく、はいっと、香典袋を手渡す事にも抵抗を感じる。
おそらく、知人も現金では受け取ってくれないだろう。
それなら、なにか品物にするか、と思うのだが、弔慰の品って、いったい何にすればいいのだ?
これまで、弔慰の品というものは、考えた事もなかった。
オーソドックスには献花などだろうけど、お葬式を出すわけではないので供花の形で贈るわけにはいかないし、かと言って、菊の花を花束にして持って行くというのもちょっとどうかと...。
やはり、何か品物にしようと思うのだが…
お線香はどうか…
う~ん、仏壇を作るわけではないだろうから常々使うわけではなく、お線香ではほとんどが余ってしまうだろうな。
お茶かお菓子ではどうか...
う~ん、お茶なら実用品としてOKか。お菓子はなんだか私的にピンと来ない。
う~んと悩んで、結局、これにした。
いわゆる、デジタルフォトフレームだ。
弔慰の品として適切な品であるか否かは、正直、ちょっとわからない。
慶事の場合は、これから撮影するであろう写真や動画を納めてください、という気持ちで渡す事は問題ないだろう。
弔事の場合は、弔慰の品がこういった家電製品で問題はないのかというそもそもの疑問があるし、亡くなった犬の写真や動画を再生したら、悲しみが新たになってしまうのではないかという気がしないでもない。
しかし、逆に楽しかった思い出を再生する事もできるのだからいいではないか、と、(自分として)前向きに考える事にして、失礼にはあたらない(少なくとも知人は失礼とは思わないだろう)と考えて、弔慰の品はこれにする事にした。
わからない事はまだ続く。
弔慰の品であれば、包装紙に包んでリボンでも付ければいいのだろうけれど、弔事の場合はどうしたらいいのだろう?
剥き身で渡すのは、いくらんなんでも失礼過ぎる。かと言って、弔事に使える包装紙なんてあるのだろうか?
これも、う~んと悩んで、風呂敷で包む事にした。
これでいいのかどうか、正直わからないけれど、お香典、ご霊前、ご仏前であれば、ミニ風呂敷とも言えるふくさに包んで持って行くので、落ち着いたデザインの風呂敷であれば、失礼に当たらないだろうと考え、風呂敷で包む事にする。
さて、準備した弔慰の品を知人に手渡す。
やはりと言うか、知人の目からは涙が溢れ出てきた。もちろん、この涙は、ずんべ が弔意の品を渡したことに対してではなく、かわいがっていた犬を思い出してのものだ。
いやもう、どう話しかけたらいいのか、わからない。
文字通り「言葉が出ない」状況。
ずんべは、そろそろ50に手が届きそうな年齢になっているが、なかなか、こういった時にかける気の利いた言葉が浮かばない。
いろいろ難しい。